2.「ノアの教典」 2章「『エデン』~人々を守る理想の楽園~」

新世界ノアでは全ての使徒がエデンに住んでいます。エデンは人々の夢を現実の世界に作った楽園です。

 

使徒土地を持つことを禁止され、家を持つことは出来ません。しかし、誰も不満に思う人はいないのです。なぜなら、世界中のエデンに自由に住むことが出来るからです。プロのシェフが作った料理を毎日無料で食べることが出来ますし、生活に必要なものは全てホテルが用意してくれます。ホテルに宿泊しているため、家事も必要ありません。毎日が最高クラスの高級ホテルに泊まれるのです。

 

土地を買い、家を持つことは大きなリスクを伴います。2019年の調査によれば首都圏の新築一戸建て住宅は約4000万円とされています。一括で払える人は決して多くなく住宅ローンを組みます。35年ローンの場合では年利約0.5%の利子を払わなくてはいけません。利子だけで700万円になります。4700万円のローンは1ヶ月約11万円支払わなければなりません。これが首都圏の平均なのです。さらに住宅の維持費は30年間所有した場合の平均値で計算すると、税金や修繕費、保険料などで1カ月あたり2万2000円かかるとされています。これを生涯コスト(80年)に直すと、住宅の維持費だけで約2112万がかかるのです。そして、この他にも、食事代や自動車ローン、通信費、生命保険、自動車保険、光熱費などは固定費となり、生活の負担はかなりのものになります。

もしかしたら、大地震や台風、竜巻、豪雨など自然災害が起こるかもしれません。雷が落ちたり、火事が起こるかもしれません。それらが理由で家が倒壊してしまったら、借金だけが残ってしまいます。また、家にトラブルが無くてもリストラに遭い職を失ってしまうかもしれません。事故に遭ったり、病気になってしまうかもしれません。家を建てることは一世一代の大博打だったのです。

 

一般的な国民の生涯年収は約2億円と言われており、自動車の生涯コストは約4000万円、さらに住宅の購入と維持費を含めた生涯コストは約6000万円で、自動車と家のコストだけで生涯年収の半分を占め、国民を苦しめたのです。

 

今の時代では、考えられないかもしれませんが、なぜ、人々は土地を買い自分の家を持とうとしたのでしょうか?その理由は家を持たなければ安定した理想の暮らしが手に入らなかったのです。国や県が税金で建てた小さくて狭い集団住宅や団地でも無料で住むことは出来ず、満足できる普通の広さの綺麗な家に住むためにはかなり高い家賃を払わなければなりませんでした。その金額は新築一戸建て住宅のローンとそれほど変わらないものでした。理想の安定した暮らしを手に入れるためには、土地を買い、家を建て住宅ローンを払い終わるしか選択肢がありませんでした。

 

理想の安定した暮らしを手に入れるために、人々が必死で土地を奪い合い、家を建てた結果、「空き家問題」が起こりました。総務省の2018年調査データでは全国に846万件の空き家があるとされていました。人々が人生をかけた努力は無駄になり、日本の小さな領土で使わない無駄な土地がたくさん出来てしまったのです。これだけの空き家があれば、大災害で被害に遭った被災者たちやホームレスで住む家がない人達を少しでも助けられるのかもしれませんが、個人個人が所有しているため国は有効利用も出来ないのです。

新世界ノアが誕生してからは、さらに「空き家問題」は深刻化しました。ほとんど全ての使徒がエデンに住むため、日本中に作られてしまった家の解体作業に追われたのでした。

 

政府が国民の生活を保障しなかったことが全ての原因なのです。満足できる安定した暮らしを得るためには家を建てなければならない社会全体の仕組みを作ったため、人々は家を建てることに夢を見たのです。

 

新世界ノアではもう、全ての使徒は「土地」も「家」も買わなくていいのです。国の予算のほとんどを使って、人々が理想に描いたエデンを作ります。人々の労力を無駄遣いしません。

エデンは空き家問題のようなことは絶対に起こりません。人間が歴史的な芸術建造物を大切にするのと同じです。使徒にとってエデンにはそれ以上の価値があるのです。エデンは国家予算1000兆ベリーの9割の予算が使われます。人々の生活のほぼ全てが詰まっているのだから当然です。歴史的建造物には住むことが出来ませんが、エデンには無料で住むことが出来、高級ホテルに泊まれ、食事も生活用品も全て用意をしてくれるのです。さらに外観も芸術的な建造物です。空き家問題のように古くなったから使わないという、無駄がないのです。

 

エデンは人々が理想に描いた楽園です。エデンの中央には「アスクレピオス」という50階を超える巨大なとても美しい高層ビルがあります。そこの内部には、幹細胞培養施設でエデン内にいる人たちの幹細胞を培養しています。総工費は1兆円以上が使われ、そこには2万人以上の人達が暮らせる住居スペースや飲食店、娯楽施設が入っています。エデンは世界中全ての人々が住みたいと憧れるようなものでなければなりません。王族のニュースやテレビを見たり、物語を読んで、お城に住むことに憧れたのであれば、みんなでお金や労力を出し合ってお城を作り、そこで住んで生活をすればいいのです。見た目がお城でもいいですし、ゲームに出てくるような幻想的な街でも構いません。多くの人が憧れる建造物を作るのです。本当に心の底から、エデンに住みたいと思う人々が生まれればその流れは止まらなくなります。次はもっといいエデンを作ってそこに住みたいと考えるようになります。その夢のエデンが建設されていくのを期待に胸を膨らませながら、仕事をすることが出来るのです。

また、一度、建設されたエデンは後世に残っていきます。エデンは誰のものでもありません。ノアの全使徒のものです。エデンを作れば作るほど、後世の人々は楽な人生を歩むことが出来るようになるのです。「子どもや孫のために、素晴らしいエデンを残してあげたい」と思うのも仕事へのやりがいの一つです。世界中のどのエデンも全ての使徒のものですので、人々の労力は全て使徒のために使われています。

 

過去に税金で作られていた道路や集団住宅、商業施設は人々の生活を良くしません。それが作られるとしても楽しみを抱くこともありませんし、それが作られても多くの人々の生活を救うものではありませんでした。税金をどれだけ使っても、一向に国民の生活は豊かになっていかないのです。税金のほとんどは富裕層や権力者が儲かるように使われ、作られた建造物も国民から搾取する仕組みの一部だったからです。

 

全てのエデンは中央に「アスクレピオス」があり、その周辺に高級ホテルが作られます。世界の有名ホテルが内装を監修して、作られています。最高級ベッドが備え付けられ、家具や家電も品質の高いブランド物ばかりです。使徒は家を持っていませんので、全ての人々がホテルや旅館に宿泊します。宿泊業界はかつてないほどの収益を得られるようになり、競争が激しくなっています。エデンに住む使徒の投票によって毎年、ホテル業者が選ばれ、最も人気の高いホテルが運営を行います。ですので、エデンによって運営しているホテル業者が異なります。

 

使徒は毎日3回エデン内のレストランで食事をとることが出来ます。1回の食事で1000円まで無料で購入することが出来、それ以上は働いたお金で、食事をとらなければなりません。

ノアの世界ではホテルだけでなく料理の品質も超一流です。料理人は最も人気の高い職業の一つになっています。一般的に使徒は料理をしませんので、飲食店の収益もまた大幅に上がりました。幼いころから料理を学ぶことも多く、さまざまな料理店で修業を重ね、次々に一流の料理人が生まれています。ノアの世界では基本的に広告は出来なくなっていますので、年に1度行われる世界料理コンテストに参加し、入賞することが唯一の広告になります。人々はそのコンテストに向けて日々、料理の味や技術を磨いているのです。

 

エデン内でのレストランを経営している料理人以外は料理をしてはいけません。そもそも、ホテルの宿泊する部屋には、もちろん台所は備え付けられていないのです。誰でも台所が利用できるようになってしまえば、包丁や火を使うため危険です。安全のために使用者を限定しているのです。また、宿泊する部屋に台所を作らないことで、エデンの建築費も大幅に削られています。

 

新世界では衣服や靴はエデンから無料で支給されます。これは各エデンの使徒たちの投票によって、身に着けたい衣類が決められ、エデンごとに衣類は統一されているのです。全て同じ衣服ではなく、一流のファッションデザイナーが作ったものから投票によって10種類程度が選ばれるのです。ですので、全て同じ衣服ではありませんが、ある程度、統一されているのです。あるエデンは流行ファッションだったり、あるエデンは着物だったり、あるエデンは古代ローマ人が羽織っていた神々を思わせる衣服であったり、あるエデンはアニメの世界のコスプレのような衣服を着ていたりします。それらは全て、各エデンの人達によって決められるのです。ですので、世界中のエデンを旅行することで、様々なデザインが統一された世界を楽しむことが出来ます。

エデンの中にはショッピングモールもあります。そのほとんどがファッションに関係するものばかりです。生活必需品はホテル業者だけが購入でき、一般の使徒は購入することが出来ません。ただし、何を買うかはホテル業者ではなく、使徒の投票によって決められます。ショッピングモールでは、衣服や靴、化粧品などが並んでいます。しかし、ショッピングモールにある衣服は所有が出来ません。全てレンタルです。新世界では、多くの人達が同じ服を着ています。だからこそ、特別な日にはよりおしゃれを楽しみたいものです。ショッピングモールでおしゃれな服を選んで、その日限りのおしゃれを楽しむのです。働かなくても生きていける新世界では、おしゃれをすることも働くための大きな理由の一つになっています。

新世界では「所有の禁止」が行われています。これは衣類であっても例外ではなく徹底されていることなのです。所有を禁止することによって得られるメリットは計り知れません。必要以上に物を作らないことは無駄な仕事を減らすことが出来ますし、地球環境も大きく負担を減らすことが出来ます。また、エデンにある高級ホテルの部屋にはほとんど、収納がありません。これは、危険物を隠せないように配慮されているのです。所有させないことで人々の安全性を確保しているのです。

 

エデンには人々を守る仕組みも取り入れられています。日本の戦国時代の城と同様にエデンの周りは高い壁で囲まれており、さらにその外側には大きな堀が覆っており、徒歩の場合、東西南北に設置された橋以外の入園は不可能になっています。しかし、通常時はこの橋でさえも上がっており門も固く閉ざされています。橋が下ろされるのは緊急時や大きな物資配達時に限られているのです。入園するにはアークで移動するしかありません。エデンとエデンの移動はアークで行うのです。アーク乗り場は警察署になっており、警察官が駐在しています。危険人物の侵入や危険物の持ち込みを防止できるよう関所の役割を果たしているのです。

入園の際は必ずスマートフォンでチェックインしなければなりません。ですので、中央の情報システムでは全ての使徒がどのエデンに滞在しているのか把握しています。また、使徒スマートフォンと化粧品、ティッシュ、ハンカチ以外の所有は禁止されています。アーク乗り場でエデンに入園する際には必ず3Dスキャンでボディチェックが行われるのですが、ほとんどのものを持ち込めないため一瞬で終わります。カバンを持っている場合は、中身をチェックされます。このボディチェックを簡易にするために、衣類にはポケットをつけることが出来なくなっています。新世界ノアでは、このようにして危険物の持ち込みをかなり厳重な体制で行われているのです。

 

安全に対する取り組みはそれだけではありません。

新世界ではホテルが生活で必要なものは全てを用意してくれます。そのため、日用品を扱うスーパーマーケットなどは存在していません。刃物はもちろんハサミのようなものですら一般の使徒は手に入れることが出来ないのです。そもそも、物の所有は基本的に禁止されているので一般の人々は手に入れることが出来ないことは当然のことなのです。そのため、エデンには危険物の持ち込みが出来ないので安全な暮らしが出来るようになっています。また、家を所有せず、ホテルに宿泊するため危険物を隠すことも出来ません。毎日ホテルの従業員が隅から隅まで掃除を行うため、必ず見つかってしまいます。これによって、麻薬や銃、刃物などの所持は完全に無くなりました。飲食店を経営する料理人以外は包丁も手にすることが出来ません。また、エデンの中では飲食店以外、火を使わないため、火事も起こっていません。万が一、料理に使う火が火災に繋がった場合を想定して、飲食店は最上階に作られています。また、消火設備も最新のものが備え付けられています。たばこもまた最上階の喫煙室でのみ吸うことが許されています。火を使うたばこもまた、所有は出来ないのです。

さらに安全を守る対策として、至る所に監視カメラがつけられています。宿泊しているホテルの部屋やトイレ、大浴場以外の場所にはほとんどの場所に設置されているのです。そのため、もし何か事件があった場合にはすぐに犯人を特定することが出来ます。また、スマートフォンにはすぐに警察に通報できる機能を搭載しています。スマートフォンの端にあるボタンを長押しするだけで、警察に繋がり位置の特定とハンドフリー通話が自動で行われます。

 

過去の時代では、誰でも人を殺せる刃物や薬品を購入することが出来、インターネットショッピングではあらゆるものが買えたのです。ネットでは密かに銃や麻薬の取引も行われていたと言います。各家庭には包丁や火を起こせる道具があり、毎日のように殺人事件や火事が多発していました。

 

犯罪対策としては、現金をなくし仮想通貨にしたことも大きな成果をあげています。違法なマネーロンダリングに利用されていた銀行は全て無くなり、預金口座は国から与えられる一つだけになっています。さらに現金がなくなったことで隠すことが出来ず裏金や闇の取引が出来なくなりました。また、1人に1つ支給されたスマートフォンは個人が特定できるため、容疑者のスマートフォンの利用を一部制限することによって、ホテルの宿泊が出来なくなる上、アークの利用が出来なくなるため、他のエデンにも逃げることが出来ないのです。もし、人を脅してその人のスマートフォンを奪ったとしても、生体認証が出来ませんので、ほとんどの機能は利用出来ません。これらの対策により、犯罪はほぼ完全になくなったのです。

 

それから、万が一、戦争などになったときのために防衛の事も考えておかなければなりません。エデンの周りは全て高い壁に覆われており、外敵からの侵入を防げるつくりになっています。通常時でも全てのアーク乗り場は警察署になっており、常に警察官が在中しています。さらにエデンの周囲は自衛隊の駐屯地となっており、常にエデンが守られるようになっています。エデンの周りを覆っている壁の一番上には自衛隊が入れるようになっており、エデンの内側に入る前にここで食い止めることが出来ます。高い壁と大きな堀に囲まれていることによって、陸からの侵入はまず不可能です。また、エデンの周辺には対空迎撃ミサイルが一定の距離ごとに備え付けられており、空からの攻撃も防ぐことができます。

 

エデンには命を守る対策としてエデンの中心は、大規模な幹細胞培養施設になっており医療設備も完備され病院も兼ねています。そこで全ての使徒の幹細胞が培養され、常に大きな怪我や病気に備えられているのです。幹細胞培養施設を中心にして、放射状にレールが作られアークで移動できるようになっています。このようにすることによって、初めて訪れた使徒であっても迷うことなく病院に辿り着くことが出来ます。また、エデンのどこにいても、病院までの距離が遠くならないようになっており、病院まで一直線に止まることなく進むため、非常に速く病院に行けるようになっています。これは人々の命が守られるようにエデンの建築でルールが決められているのです。病院の周りには一般の使徒が無料で宿泊できる宿泊部屋になっており、救急の場合でもすぐに病院に行けるようになっています。

 

さらに、人々の命を守るため、エデンは大災害にも非常に強い設計になっています。専門家の土地調査によって大地震が起きにくい場所に建築されます。また、地震が起きた場合でも、過去に起きた地震では絶対に倒壊しない設計で作られています。津波の被害にあわない場所を選び、万が一津波が来たとしても、エデンの周りは高い壁と大きな堀で囲まれているため、建物が浸水するようなことは絶対にありません。さらにその堀は川まで水路になっており、津波の膨大なエネルギーは水車を使って全て電気へと変換されるようになっています。

台風に対する守りも強固なものとなっています。エデンの全ての建物の外壁は爆風でも耐えられる強固なもので出来ており、ガラスは全てかなり分厚い強化ガラスです。そのため、物が飛んできたくらいではびくともしません。台風が通る進路を予め想定し、エデンに近づくまでに風力が収まるよう、台風のエネルギーもまた風力発電により電気に変換されます。また、竜巻による被害をなくすために、エデンの周辺には気圧をコントロールする装置を設置されています。

万が一、大きな被害が出た場合でも予備のエデンを作っているため、被害地のエデンの人たちは予備のエデンに移るだけで元の生活が行えるようになっています。復興が行われるまで忍耐強く耐える必要もないのです。

過去の時代では、好き勝手に土地を買い、家を建てていたので、居住区域が広く全ての人々を守れるように出来ていませんでした。自衛隊と言うのは、自分たちの国民を守るように作られたはずです。しかし、戦争から国民を守れるような国づくりはしていないのです。それどころか各地に原子力発電所までも作り、一つでも守り切れず爆発するようなことがあれば、爆心地はもちろん周辺の一体の地域に住むことも出来なくなってしまいます。今は無い原子力発電所は過去に広島で落とされた原爆の100倍以上の威力をもつ放射性物質が放出されると言われていました。もし、他国の兵士が陸から攻めてきた場合、国民はどこにも避難場所はなく、逃げまとい、自衛隊は必死で原発を守るしかなかったのではないかと言われています。

災害からも国民を守るような国づくりもしていません。今では考えられないと思いますが、海や川の近くに家を建てたり、山のふもとや山の中に家を建てたりしていたのです。万が一、自然災害が起こればとても危険な土地ですが、禁止する法律もなく自由に住んでいたのです。大災害が起きたときは、居住区域が広いためあらゆるところに自衛隊を派遣し、救助に向かわせたと言われています。政治がしっかりと機能しなければ国民を守れず、自衛隊までも危険にさらすことになるのです。

 

エデンを作ることこそ、理想の新世界を創る近道なのです。「土地を買い独占しない」「家を建てない」「車がなくても快適に生活が出来るエデンを作る」のです。全ての使徒は幸せになるために考えを改めなければなりません。

土地や家を奪い合い、誰かが独占する社会は許してはいけません。みんなで最高のエデンを作り、そこに住むのです。エデンが世界中に作られれば作られるほど、世界中の人々が豊かな生活を送れるようになります。今日も世界中で、現状よりもさらに良い最高のエデンを創ろうと、働いている人たちがいます。ノアの理想世界を人々が望み、協力し合う世界は希望で溢れています。