6.「ノアの教典」 6章「『仕事』~人々の理想世界を創る~」

 

 人々が仕事をする理由は、人々が幸せに生きていける世界を実現するためなのです。決して、自分や家族、周りの人達が幸せにするためではありません。それが理由で良いのであれば、詐欺や暴力団など反社会的な組織であっても家族や周りの人達の生活を支えています。それも、一般の人達では稼げないほどのお金を稼ぎ、贅沢な暮らしをさせて大きな幸せを与えているかもしれないのです。

 

 だからこそ、仕事が存在する理由は、「人々が幸せに生きていける世界の実現に貢献するかどうか」でなければなりません。不必要な仕事が溢れてしまえば、仕事が人々を不幸にしてしまいます。

 

 まずは、世界中の人々が幸せになれる楽園を想像しましょう。全ての人達はその楽園を支える一人にならなければならないのです。出来るだけ鮮明に想像し、どんな仕事に携わりたいか考えてみてください。

 

 新世界ノアでは、エデンと言うノアの使徒が住む居住区域に住んでいます。エデンは、全ての人々が幸せに生きていくための楽園です。周りは高い壁で覆われ、その周りには深い溝が作られ守られています。さらにその周辺には自衛隊の駐屯地が囲い、常に守られているのです。エデンの中央には50階を優に超える巨大なとても美しい高層ビルが建てられています。その超高層ビルの名前は「アスクレピオス」と呼ばれます。医学の神の名前が与えられているそのビルの中央には巨大な幹細胞培養施設があり、そのエデンに住んでいる全ての使徒の幹細胞が培養できるように細胞バンクの設備が備えられています。新世界ノアでは幹細胞治療が医療の99%を担っています。その培養施設の中には病院もあります。その巨大なビルの最上階にはレストランが立ち並び、残りのほとんどはノアの使徒が宿泊する部屋になっています。下層の階では、ファッションアイテムのレンタルや映画、スポーツ、ゲームなどエンターテイメントを楽しむことが出来るようになっています。

 

エデンの中央にある超高層ビルである「アスクレピオス」を世界で初めて建設した際、ドバイにある「ブルジュ・ハリファ」をモデルにしたと言われています。外見も内装も美しく、誰もが住みたいと憧れるような象徴になったのです。

 

この「アスクレピオス」の周辺にも高層ビルが立ち並んでいます。これらもまた、アスクレピオスと同様に、使徒が無料で宿泊できる美しい外見と内装の高級ホテルやワクワクするエンターテイメントの娯楽施設ばかりになっています。旧日本では、都会の高層ビルはビジネスオフィスばかりだったと言います。しかし、これらが「お金儲けが目的の建物でなければ、どれだけの人達が救われるのか」という問題に発展し、今ではビジネスオフィスとしての建設は最小限度に抑えられています。高層ビルの建築はビジネスではなく、人々が住むことが出来るものが優先的に作られているのです。

 

このように、エデン内には個人の家などはありません。個人の家は大きな土地を使う割に、住める人数が限定されてしまうからです。新しい新築の家は、使徒が住む高級ホテルが足りない場合に残されていましたが、今ではほとんどが取り壊され、家はありません。

 

家が無くなったことで、エデンの居住地域はそれほど広くはありません。土地は大きくありませんが、多くの人々が住むことが出来ます。また、居住地域が広くないため、エデン内は車が通る道路がありません。車社会が無くても、不便な生活にならないように都市開発が行われているのです。新世界の交通手段は長い距離では「アーク」を利用し、短い距離であれば「エスカレーター」が採用されています。

 

 エデンとエデンとの移動はアークに乗ります。アークとは旧時代のジェットコースターをモデルに作られたものです。超距離を移動するアークではリニアモーターカーの技術が使われ、超高速で移動が可能です。基本的には1人乗りのため、待ち時間はありません。高さを十分に有効活用しているため、土地をあまり使わずに多くの人達を移動させることが出来ます。また、1人乗りのため、不必要なエネルギーを使いません。全て太陽光発電で賄われています。

エデンは現在、日本だけではなく世界の至る所に作られていますので、世界中をアークで自由に移動することが出来ます。現在では、海で隔てられた大陸間もアークで繋ぐことに成功しています。これはまだまだ、多くはありませんが、大陸間の距離が短いところで次々に作られています。

 

車も無くなったわけではありません。エデンの外にはドライブコースが作られ、そのコースは海沿いなど美しい景色が見られる場所に多く作られています。これは交通手段ではありますが、生活に必須のものではなく娯楽の一つだとされています。さらに、車だけでなく空飛ぶ車も作られています。人々が住むエデンの上空を飛行することは禁止されていますが、ドライブコースのように、スカイロードという特別な区域でのみ飛行が許可されています。全て自動運転で、子供からお年寄りまで免許がなくても乗ることが出来ます。万が一、墜落しても大きな被害が生まれない対策や車体にはパラシュートが備え付けられており、脱出できるようになっています。これも、生活に根付いたものではなく、娯楽の一部なのです。人々が生活するエデンに車や空飛ぶ車を利用しないことで、けが人や死亡者はほとんどいなくなりました。近年では様々な対策によりゼロを達成するようになっています。技術発展は人を傷つけたり、殺したりしないのです。しかし、利権が絡んだ政治によって、凶悪な兵器に変えてしまうのです。

 

今度はもう少し、職業別にイメージしていきましょう。あなたはどんな仕事に就きたいか想像してみてください。

 

 新世界ノアでは、ほとんどの人達がエデンの建築と運営のために働いています。エデンを運営するためには、何が必要ですか?まずは、人々が住むことが出来るホテルが必要です。中央にある巨大医療施設のアスクレピオスは非常に多くの使徒が宿泊できますが、建築に時間がかかりすぎます。ですので、アスクレピオスの建築と同時進行で、ホテルの建築が行われます。アスクレピオスはエデンへ住むことの人々の憧れの象徴です。人々の心を動かし、変革の希望になります。ノアの世界を創る上で、全ての人々が住みたいと憧れるアスクレピオスを建てることから始まり、同時にその周辺にも高級ホテルを建築していきます。新世界において、いかに建築技術が大切か理解できるはずです。これらの建築を行うために、地質調査が行われ、それに基づいて都市開発計画を行い、建物の外観や内装のデザインが作られて、その設計に基づき、実際に多くの人達が現場で建築の作業を行います。この世界で建築に関わる仕事は最も重要な仕事の一つです。

 

また、それらの建物には当然、電気や水道、ガスなどライフラインを確保しなければなりません。そういった生活を支えるエネルギーを支える仕事も必要です。エデンには外観を損ねる電信柱は一つもありません。電気、水道、ガス共に長い距離ではアークを支える柱の中を通っています。アスクレピオスの場合は直接アークから、電気、水道、ガスなどのエネルギーを供給します。アークでは供給できない細かな部分は地下を通して、各ホテルに供給しています。これは電気や水道、ガス共に地下で管理されているのです。インターネット回線もまた、同じ経路を使い配線されています。このように、まずは生活するためのインフラを整えなければなりません。

 

 人々は家を持ちません。全ての使徒はホテルに宿泊します。ですので、ホテルマンは新世界を支える重要な仕事の一つです。ホテルマンになるためには、学校に通い資格を取らなければなりません。学校は世界で最も評価の高いホテル業者が運営を行い、礼儀や作法などを学ぶことが出来ます。ホテルマンには、顧客からの満足度によって格付けが行われ、その階級によって給料が異なります。また、格付けの高いホテルマンを多く輩出した学校は表彰され、より多くの国家予算が振られることになります。

 人々は所有を禁止されているため、ホテルが生活必需品を全て購入し、生活環境を整えなければなりません。より快適に幸せな暮らしが出来る基盤を作るのがホテルの仕事です。

 

 アスクレピオスの中や娯楽施設にはスポーツやマンガ、インターネット、ゲームセンターやカジノがあります。人々は「無料の楽しみ」を禁止されている代わりに、より高品質の楽しみを提供している人たちもいます。有料ですが、過去の人々よりも楽しみに使う時間は遥かに増えています。生きていくために必要なものを全て提供されているため、娯楽に時間やお金をかけることが出来るのです。娯楽施設にも国家予算は多く使われ、ラスベガスがモデルに作られています。日々の疲れを癒すために、より質の高いエンターテインメントが使徒たちに提供されています。

 

 アスクレピオスの中心には巨大な幹細胞培養施設があり、エデンに住んでいる全ての人々の幹細胞を培養しています。幹細胞治療を毎月行うことで、人々は老化をしなくなり、肉体を全盛期の状態に維持することが出来ます。また、細胞バンクに常に大量の幹細胞を保管しておくことで、大きな怪我や病気に備えています。手術を行った際には、幹細胞を点滴し、驚異的な超回復が行われることで非常に早く退院が出来るようになっています。

 今や医療の99%が幹細胞治療となり、過去では治療が不可能とされていた病気や怪我も治るようになっています。99%が幹細胞治療になった理由は、病気であるなしに関わらず、幹細胞治療を受け、老化を防いでいるからです。自動車社会が無くなり、無理を強いて必要以上に競わせるスポーツが無くなったことで、怪我が激減し、さらに生活水準が向上したことで、病気もなくなりました。また、全ての人々が幸せになる世界を目指した政治は、生活の安心安全を提供し、人々の満足度は高く、ストレスの少ない生活を送れたことも病気を減らしたことに繋がっています。今や医師や看護師、介護士の仕事はほとんどなく、細胞培養師が医療の中心となっています。多くの医療に関わる職業をしていた人々は細胞培養の知識を学び、研究者になったり、人々の治療に携わっているのです。幹細胞治療は有料ですが、ほとんど全ての使徒は老化を防ぎ、肉体を最高の状態に保つために毎月治療を行います。この幹細胞治療もまた、働くための強い動機になっています。

 

 エデンにある建築物の最上階には、レストランがあります。アスクレピオスや高級ホテルが万が一、火災になった時のために最上階に集められているのです。エデン内で火を使う仕事は料理人以外には許されていません。エデンの最上階には消防士が常時待機しており、消火設備も備えられています。そのため、非常に早く消火活動を行うことが出来ます。しかし、新世界では一度も火災が起こっていません。そのため、消防士の人口は年々減少しており、飲食店に携わる人達が、消火設備の使い方を学び、消火活動に参加するという試みが始められています。

 

 新世界では一般の人々は料理をすることが出来ません。食材を買うことも出来ませんし、宿泊できるホテルには台所もありません。料理をしたい人は料理人になる必要があります。レストランで、料理をする人たちもまた世界を支える大きな仕事の一つです。

 料理人は、エデン内で唯一人を殺すことが出来る包丁や火を使うことが許された人達です。ですので、料理学校で衛生管理や危険物管理を学び、さらに資格を取得しなければなりません。また、危険物の使用が許されているため、犯罪の履歴や反社会的思想がないかどうかも調査されます。ただし、資格取得の難しさよりも、安全に運営してきた実績を積み重ねることを重視しています。エデン内に暮らしている全ての人達においしい料理を提供するために、多くの料理人が必要だからです。アスクレピオスやホテル最上階の飲食店のテナントは、エデンが低価格で貸し出し、改装も負担をするため、大きな費用の負担をすることなく飲食店の経営を行うことが出来ます。毎月のテナント料は売り上げに応じて上昇し、払えない人がいないようになっています。新世界では経営を行う場合であっても借金は必要ないのです。必要なのはお金ではなく技術や信用なのです。

 

 エデンは高い壁に囲われ、さらにその周りは深い溝が作られています。その溝には、エデンで使った生活用水が流れ、エデンへの侵入を防いでいます。初めに作られた壁は予算を削減するために2メートルほどのものでした。簡単に乗り越えることが出来るものでしたが、エデンの内部には監視カメラとセンサーが設置され、スマホで認証を行い、入園の許可がない人物は通報される仕組みになっていました。このように無許可で侵入を防止することから始まりました。今では、高い壁が築かれています。ただし、この壁は透明の素材が使われ、エデンに住む人たちが束縛を感じないように作られています。初めはアクリル板が使われていましたが、美しさだけでなく防衛の観点からも、より高度な材質のものが日夜開発されています。

 

 エデンは現在、10mを超える高くて分厚い透明の壁に覆われています。これは、爆撃にも耐えられる強度です。外からの侵入はこの壁によって完全に防がれます。エデンに入園するためには、アーク乗り場で、スマホによって生体認証を行わなければ入園できません。スマホ以外の持ち込みは禁止され、3Dスキャンによって持ち物検査が行われます。怪しい場合にはアーク乗り場に常駐している警察官が、ボディチェックを行います。アーク乗り場が警察署となっており、ここで危険物や危険人物の入園を完全に阻止します。

 

 壁や溝のさらに外側には農地や工場が広がっています。出来る限り、食糧は自給自足で賄うことが出来るように、農業に力を入れています。農業に携わる人達が増えるように、国家予算を使い、高い給料がもらえるようになっています。農薬や化学肥料を使わない方法を学校で学べるようになり、より安全な食品づくりに貢献した農家は国から補助金が貰えるようになっています。また、農業だけでなく食に関わる漁業や畜産業も同じように国から補助が受けられる職業になっています。食に関わる仕事もまた、新世界を支える重要な仕事の一つです。

 

 農地のさらに外には、工場が立ち並びます。人々が生活に使う工業製品が作られています。特に、エデンの建築やアークに関するものが最も多いのですが、家具や家電、生活用品なども製造されています。ただし、持続可能な社会を目指し、環境への配慮で必要なものを必要な分しか作りません。例えば、テレビであればたった1種類の製品しか作ることが出来ないのです。毎年、コンテストが行われ、全ての使徒による投票の結果、最も良い商品に選ばれたものだけが製品化されます。その結果、環境への負担を抑えるだけでなく、仕事を大きく減らすことにも貢献しています。経済が最も優先される世の中になってはいけません。仕事が減り、人々の生活が豊かになり、地球環境にやさしいことの方が、お金よりも大切なことなのです。

 

さらにその工場の周りには、自衛隊の駐屯地が広がっています。エデンに住む人々やその周りで働いている人たちが安全な生活を送れるように、自衛隊が防衛を兼ねて訓練が行われています。

 

簡単ですが、新世界ノアの世界であなたが働くイメージができたのではないかと思います。もしかしたら、もっと素晴らしいイメージを思いついた人もいるかもしれません。その世界を実現するために、あなたには何が出来るでしょうか?それこそが仕事なのです。

 

新世界ノアが誕生したことで、無くなっていった職業も多く存在します。理想の世界には、必要以上の仕事はいらないのです。

 

完全になくなった職業は、「政治家(選挙家)」や「官僚(政治家)」です。誰か一部の人達に政治を握らせてはいけません。権力者や富裕層が政治を支配してもいけませんし、貧困層であっても政治という大きな権力を持たせてはいけません。人はお金や権力によって、正義の心を失ってしまいます。全ての人々が政治を学び、全国民で政治が出来るように仕組みを作らなければならないのです。全ての分野の政治に関わる必要はありません。もっとこんな世の中だったら多くの人達が幸せになるはずだ思ったとき、それを実現するのが政治です。何も難しいことではないのです。自分の興味があることだけ、参加すればいいのです。国民の大多数が平和を望めば、絶対に戦争が起きることはありません。軍隊を動かすのもまた、国民の権利だからです。

 

ただし、新世界ノアが誕生する時には、多くの政治家が活躍したと言われています。世の中を大きく変えるのもまた政治家なのです。本当に理想の世界が生まれれば必要ない仕事ですが、支配された世界を変えるのは政治家の力が必要なのも現実です。

 

旧日本では、毎年300兆円(※1円=1ベリー相当)の国家予算が組まれていました。しかし、人々が生きていくために必要なものに予算は使われず、生活が一向に豊かになっていかなかったのです。国家予算は、国民が搾取される仕組みを作るために使われていたのです。つまりは奪う側に回った人間に国家予算は流れ、奪われる側は徹底的に奪われたのでした。

 

この国家予算を、理想世界を実現するためにエデンの都市開発へと流れるように、政治家たちは行動をしたのでした。日本中で新世界を求める政治家たちが無所属で立候補を行い、次々に新しい考えを持った議員が生まれたのです。その後、新世界ノアの新党が結成され、政党助成金献金が新たな世界を創る資金になりました。さらに、新世界の実現を望む知事が次々に選ばれ、地方のお金もまた、エデンへと流れたのです。最終的には、新世界ノアの新政権が誕生した後、官僚政治を廃止し、国民投票による完全民主主義を確立させました。こうして、政党政治終結したのです。新世界の実現に貢献した政治家たちは、現在、優遇された生活を送っています。

 

他にも無くなった職業は多く存在します。それは、旧日本の政治に関わる職業です。市役所や社会保険事務所、税務署、法務局、労働基準監督署、学校などの公務員や税理士、公認会計士、学習塾などが職を失いました。なぜなら、全てIT化され自動的に事務処理できるようになったからです。必要以上の管理は不正を招いたり、国民に負担をかけるだけなのです。全ての人達を助けるのであれば、管理は必要なくなります。助ける人と助けない人を分ける必要などないのです。職を失った人々は優先的にホテルマンやエデンの建築の仕事に携われるように支援が行われ、新たな職に就いて新世界を支えています。

 

それから、保険が無くなります。保険は政府が国民に対して生活の保障をしっかりしないため、国民が不安になり保険が生まれるのです。自動車社会や家も持たないため生活に大きなリスクを負わなくて済みます。さらに、新世界では国民が生きていくために必要なものを全て与えます。だからこそ、需要が無くなってしまうのです。もし、保険が必要なら生活保障を増やせばいいのです。それは、国民自身が国民投票で政治を変えれば保障を増やすことも出来ます。たくさんの保険があるということ自体、政治が悪い証拠なのです。多くの国民が生活にリスクを抱え不安を抱えているのです。さらに、保険には闇の一面もあります。保険金詐欺や保険金殺人が起こるのです。そのようなお金が反社会的勢力の資金源になることもあるのです。

 

また、激減した仕事は医療に関わる仕事です。新世界では車社会が廃止され、スポーツが安全なものになったため、怪我が大幅に減りました。さらにストレスが無く健康的な日常生活を送ることで病気も激減したからなのです。仕事が激減しましたが医療に携わりたい人は、医療研究や細胞培養学を学び、新たな医療分野で活躍しています。また、看護師や介護士の多くは人々の役に立ちたいと思う人が多く、ホテルマンになり人々の日常生活を支えている人たちも多くいます。

 

また、理想の世界では不満を抱えた国民はほとんどいません。多くの人達が幸せに生きています。そのため、治安が飛躍的に良くなります。最高の生活が提供されているため、貧困で盗みや人に危害を与える人達はいなくなります。また、エデンでの日常生活と刑務所での日常生活に大きく差が生まれ、より一層、刑務所へ入所する人々は大幅に減りました。旧日本では、生活が出来ず刑務所での生活を望み、罪を犯す人たちもいたと言われています。また、自動車社会が無くなったことで、交通違反を取り締まる必要もなくなりました。ドライブコースでは、監視カメラによって、スピード違反が撮影されるため、パトロールは行われていません。全ての警察官は、エデン内の安全を守るために勤務しています。

治安が良くなることで、消防士や警察官、弁護士、裁判所もまた仕事が大きく減ったのです。肉体的に優れた人たちはエデンの建築を行い、弁護士や裁判官など頭脳に秀でた人たちはより良い法律を作るために、新世界ノアの新たな法整備のために法学者になっています。

 

新世界では、借金が出来ません。経営が出来る条件は信用と技術と実績なのです。お金ではありません。商品開発をすることによって、国民に認められれば、国から設備が与えられ大量生産することが出来ます。そのため、お金を貸す金融業の銀行はもちろん、株式による資金集めも必要なくなりました。また、銀行に関してはマネーロンダリングによる政治との裏金問題や反社会組織の資金調達として複数口座が利用されていたことも原因で禁止されました。さらに銀行によって複数の口座があると新税制の仕組みを行えず、簡単に租税回避が行えてしまいます。また、株や為替などの金融取引が禁止された背景には平和な世界を創るためでもあります。戦争によって利益が得られる可能性があるものは全て無くしていくべきだからです。

 

ドラマやお笑い、映画、ゲーム、マンガ、スポーツなどのエンターテインメントは、人々が生きていくのには絶対に必要な職業ではありませんが、積極的に減らすべき仕事ではないとされています。ただし、新世界ノアが誕生した時代では、人々の生活が最優先でしたので、自らの影響力を使い、新世界の実現に導くために発言したり、募金を行ったりする人たちが現れました。

日本だけでなく世界中の人達が、住む家がなく貧困で苦しむことが無くなった今では、以前にも増して、エンターテインメントが盛んになっています。無料での楽しみが禁止されたため、エンターテインメントはさらに稼げる職業へと変わったのです。企業の広告に影響を受けることなく、純粋に人々が楽しめることを追求しています。ただし、新世界を本当に支えている職業の人達が憧れて仕事を辞める人たちが続出してしまわないように、収入が高すぎる場合には、国民が直接、投票によって税金がかけられ職業の抑制が行われています。

 

新世界では、広告が原則的に禁止されています。過去の時代では、無料の楽しみに広告が利用され、情報が刷り込まれ洗脳によって大手が有利になる社会が生まれたからです。広告とは、お金を使って企業の広告を行うものです。それは企業の都合のいい内容であって消費者にとっては不利なものでしかありませんでした。テレビなどで広告に起用された人物は、お金のために言わされているだけで、やらせである場合も多々存在していたのです。また、広告の自由化によって、町は看板だらけとなりお金儲けで溢れた醜い街並みに変貌してしまいました。さらに商品を売るためにインターネットでは薬事法を無視した嘘の情報が流れ詐欺のような会社が資金を稼いでいたのです。ホームページは嘘を配信している場合もある上、管理が複雑になり、無駄な仕事が増え、貧困者には維持負担もあり、資金力のある大手が有利になるため廃止されています。

そのため、新世界で唯一の広告はレビューなのです。全国民が1人1アカウント与えられ、それで口コミをすることが出来ます。ネット広告が禁止され、情報登録が出来ません。そのため国のアカウントしか存在しないのです。当然、匿名のアカウントもありません。本当の口コミのみが唯一の広告になります。お金で広告をしてもらうことは買収になり、嘘偽りの広告です。それは消費者を騙す行為として、広告を依頼した人間も広告を行った人間も罰せられることになっています。

 

このように、新世界では仕事のあり方が大きく変わりました。世界中の人々が幸せに生きていくことが出来る世界を創るために仕事が行われ、不必要な仕事は可能な限り無くしていくという考え方です。人間は仕事をするために生まれてきたのではありません。むやみに雇用を増やすのではなく、仕事がなくなるように自動化を開発した人たちが評価され、仕事が減ったことを喜ぶ世界を目指さなければなりません。AIや自動化技術により仕事が減ることで不安になる世界はどこか歪んでいます。政治がうまく機能していないのです。仕事が減ったことを喜べる世界にするためには、仕事を奪い合うのではなく、仕事を分け合う考えを持つべきです。みんなで仕事を分け合えば、自動化された現代の社会では、人間はますます仕事から解放されて自由に生きていくことが出来ます。子どものころから、仕事の奪い合いを教育されています。良い仕事に就くために勉強をするということ自体が、仕事を奪い合う教育がされていたのです。過去の義務教育は国民にとってほとんどメリットがないばかりか国民を不幸にするものばかりでした。

 

このような社会にならないためにも、全ての人達が必ず政治に興味を持ち、政治を学ばなければいけません。全ては国の仕組み次第なのです。