6.「ノアの教典」 6章3節「『仕事のない世界へ』~全ての釣れない釣り人を助けるために~」

新世界では「与える」という精神を誰もが持たなければなりません。

この物語から「釣り方を教える」のと「分け与える」のとどちらが正解なのか考えながら聞いて下さい。

 

魚を釣って生活している島がありました。その人々の中には、釣りをするのが下手で、家族に十分な食べ物を与えてあげられない人がいました。ある青年は釣りが上手で、普通の人たちよりも多くの魚を獲っていたのです。

 

その青年は、魚釣りで生活をしていけない人たちに自分が獲った魚を分け与えました。それほど、多く釣っていたわけではありませんので、自分自身が食べる魚も減ってしまったのです。さらに、魚を分け与えている間は生活が困らないのですがずっと魚を与え続けなければいけません。その人たちは自分たちで生きていくための力を身に着け成長していかなかったのです。

 

そこで、青年は「魚の釣り方を教えてあげた」のです。

 

すると、魚釣りがうまくなりその人たちは生活に苦しむことなく、生活していけるようになりました。青年も魚を分け与えないため、自分自身にも大きな負担はなかったのです。そうすることによって、魚は平等に分けられるようになり、全ての人が幸せに暮らしていけるようになりました。

 

時代が進み技術が大きく進歩していました。

 

ある青年は大きな船を持っていました。その青年は島周辺の魚を網で大量に獲るようになったのです。その青年が魚を大量に獲っていくので、魚が減り他の人たちは魚が今まで通りに取れずに生活が困難になってしまいました。そこで、青年は生活困難の人たちを雇い、船に乗せて仕事をした人たちに魚を分けることにしたのです。彼に雇われた人たちは、大量に魚を獲るようになったので、安定して生活を送ることができました。しかし、雇ってもらえなかった人たちの生活は変わらず、満足に食べていくことが出来ない貧しい暮らしを強いられたのです。

 

余った魚を彼らに分け与えようと考えましたが、それでは働いている人達が馬鹿馬鹿しくなってしまいます。そこで、残った人たちに借金をしてもらい、協力して小さな船を作って魚を獲る方法を教えたのです。大きい船ほどではありませんが、魚をたくさん獲れるようになり、借金を少しずつ返しながら、生活をしていけるようになったのです。借金を返しながらでしたので資金的にはぎりぎりの生活を送っていました。しかし、食事には困らなくなったのと、借金を返し終えたら安定した生活を送ることが出来るという希望を持つことが出来たので、その青年に感謝するようになりました。

 

10年間必死で働き、借金も全て返し終わり、全ての人たちが幸せに暮らしていくことが出来ました。

 

時代はさらに進み技術が大きく進歩しました。

 

大富豪になった青年は最先端の大きな船を数台、所有していました。しかも、その船にはオートで操縦する上、レーザーで魚のいる場所を特定し、ロボットを使って網で大量に魚を獲ることが出来ます。多くの労働者が必要なくなったので、機械のメンテナスのできる優秀な労働者だけを残して、他の労働者はみんなリストラにしました。ほとんどが自動化されているため、人件費がかかりません。労働時間も短く、魚の分け前も少なく大富豪の青年が魚をほとんど独占してしまいました。

 

ほとんどの人たちが生活困難となり、青年に不満の声が上がるようになりました。そこで、青年は大きな船を人々に有料で貸し出しました。機械の操作方法やメンテナンス料などのサポート料金はさらに別途料金を取ったのです。生活困難に陥っていた人たちは一人ではそんなお金を支払うことが出来ないので、仲間を集めてみんなで借金をしてお金を集めました。あるグループはその船をうまく使い、魚を大量に獲ることが出来ましたが、グループによってはたくさんの機能が付いた最先端の船をうまく使いこなすことが出来ずに、レンタル料を支払わなければならない分、さらに生活は苦しくなってしまいました。

 

技術の進歩とともに、貧富の格差がより大きなものになっていきました。大儲けしたグループは最先端の船を使って魚を大量に獲るノウハウをまとめて売り始めました。魚を獲っては儲け、情報商材を売ってさらに売り上げを増やしました。最先端の大きな船を高いレンタル料を払っているのにも関わらず生活が出来ない人たちは、何とかその船でお金を稼ごうと、さらに借金をしてその情報商材を買ったのでした。その中の一握りのグループは本当に魚を大量に獲ることが出来、その実績を広告にしてまた、新たな情報商材が生まれたのでした。

 

技術が大きく進み、人間の仕事をロボットが担ってくれているのにもかかわらず、人々の生活はむしろ苦しくなっていきました。一般の人と同じ量の仕事量では借金を返すことも出来ず、いくつかの仕事を掛け持ちし、死ぬまで働き続けたのでした。

 

過去の時代の多くの経営者は「魚を与える」のではなく「釣り方を教える」ことが大切だと教育されていました。しかし、「釣り方を教える」のは技術の進歩によって無理が生じてきます。「釣り方を教える」と言うのはとても古い時代の考え方なのです。中にはその情報を元に金儲けをする人や詐欺をする人々までも出てきてしまうのです。

 

「どうすれば、みんなが幸せに暮らしていけるでしょうか?」

 

それは、この技術を持った青年が「分け与える」ことで全てが解決するのです。この物語では、技術の進歩により大きな船で魚を大量に獲ることが出来るようになったことが貧富のバランスを大きく崩したのです。もう、この時点で「分け与える精神」を持たなければなりません。この物語で全ての人々が幸せになるかどうか全てのカギを握っているのは大きな力を持つ人なのです。彼の行い一つで、他の全ての人たちの生き死にを左右できるほどの力を手に入れているのです。

 

大きな船で魚を大量に獲れるようになったとき、青年は人々を雇用し、残りの人々に小さな船を作らせ魚を獲る方法を教えました。しかし、もし小さな船を作って同じ方法で大量の魚を獲ることが出来なければ、借金を返すことが出来なくなってしまうかもしれません。もしかしたら、大きな船を持っている人たちが魚を獲り過ぎて魚が獲れなくなるかもしれません。途中で病気をして漁に出られなくなるかもしれません。嵐に飲まれて、沈没してしまうかもしれません。何が起きるか分からないのです。

 

全ての人々を救う方法は「分け与える精神」です。

 

技術発展により周りの人々にはない大きな力を手に入れたのであれば、それは「分け与え」なければなりません。技術が発展すればするほど、大きな力は絶対的なものになるため全ての人々を幸せにする方法は「分け与える」しか方法はないのです。

 

大きな船を手に入れた時点で、全ての人々を雇い、交代制で働かせ平等に魚を分け与えればよかったのです。もちろん、自分の手柄は多めにとっても構いません。そうすれば、借金をさせて小さな船を作る必要もなかったのです。さらに技術発展や富により大きな力を手に入れた場合も同じです。この場合はもっと「分け与える精神」が強くなくてはなりません。最先端の大きな船をもち、ほとんどの仕事を自動化できる技術を手に入れたのなら、それをみんなで共有する必要があります。全ての船の修理やメンテナンス方法を無償で教えて、他の人々全員を雇うのです。仕事量が大幅に減ったので、毎日働く必要もありません。全員で仕事を分担すれば、みんな楽に仕事をすることが出来ます。仕事時間が減ったとしても、全ての人たちが生活出来るように魚を分け与えるのです。そうすることによって、全ての人々が幸せに暮らしていくことが出来ます。人々はもう、漁業では彼には勝つことが出来ません。むしろ、「分け与えて」くれるのであれば、競い合う必要もないのです。仕事の時間が減り、生活が楽になり安心して暮らせることを感謝し、別の得意分野で彼に恩返しをすれば、より一層、みんなが幸せに暮らせます。この「分け合う精神」が十分であれば、技術の進歩が人々を不幸にすることはありません。

 

技術が進歩すればするほど、人々の幸せは力あるものの「分け与える精神」に大きく生活が左右されてしまいます。「釣り方」を教えてもその技術には勝てませんし、資金的に対抗も出来ません。「釣り方とは奪う力」にもなりえるのです。一部の人間はそのスキルを身に着け、さらに磨きをかけレベルの高い奪い合いが始まってしまいます。これでは、どんなに技術が進歩しても人は幸せにはなれません。むしろ技術の進歩が格差を生み出し、不幸にしてしまいます。「分け与える」ことのできない力を持つものは、その力を放棄すべきです。そうしなければ、多くの人々を不幸にしてしまうからです。

 

この物語の魚と言うのは「お金」の事です。また、「魚の獲り方」と言うのは「お金儲けの方法」を指しています。ですので、ビジネスに関するもの全てで言えることなのです。

 

技術の進歩や格差社会により人々の生活を一部の人間が左右できるほどの力を持つようになった場合、本来なら政府が「富の再分配」を行い、国民全員が生活できるように調整しなくてはなりません。ここが重要なのです。しかし、歴史を学ぶと分かりますが、税金を貧者からも無理やりとり、その税金をさらに民間企業に流し、貧者からさらに搾取する政治が生まれるのです。この話であれば、大きな船を持ち大量に魚を捕った青年だけでなく、魚を捕れなくなって生活できなくなった人たちからも魚を取り上げて、そして、生きていけるように分配しない政治を行っていました。過去の歴史を見ても、この富の再分配がうまく働いた時代はおそらくありません。権力や富のあるものと国が結びつくことで悪質な政治が横行し、富裕層を優遇する政策をとることによって格差は開き、一般の人々は苦しい生活を強いられてきたのです。

 

仕事はむやみに増やすものではありません。無職の人がいて困っているかと言う理由で雇用を創出なんてもってのほかです。仕事を増やす理由は唯一、人々が幸せに暮らしていくために必要かどうかなのです。無職で困っているのであれば、今、仕事をしている人たちが分け合えばいいのです。仕事もまた、奪い合ってはいけません。仕事を増やすのではなく、分け合うという発想を持つべきなのです。

 

旧日本の政治は将来、幸せになるために理想の仕事に就きたいという思いを利用し、子供のころから意味のない勉強を繰り返させてきました。子どものころから仕事を奪い合うことを教育していたのです。16年もかけて、必死で手に入れた職業を分け与えることは出来なくなります。

 

これが正しい教育でしょうか?

 

だからこそ、教育で洗脳されないよう国民がもっと政治に興味を持ち学んでいかなければなりません。

 

みなさん、「世界中の人々を幸せにする理想の世界を作る」という夢を持ちましょう。その夢があなたの考え方の核心を作り、強い信念があれば、どのような考え方が正しくて、間違っているのか分かるようになるはずです。あなたの仕事が世界にどのような影響を及ぼすのか、それが人々の理想の世界に繋がっているのか考えてほしいと思います。