7.「ノアの教典」 7章「『世界統一』~国境のない完全平和の世界~」

新世界ノアは国境がなく一つの世界です。全ての人々が望む「完全平和」の世界が実現したのです。世界中どの国も戦争をしていません。争う理由がないからです。人々は戦争をしても、所有ができず、奪い合うことが出来ないのです。誰も得をすることが出来ず、人の命が失われるだけです。「所有の禁止」は戦争を無くし、世界を一つにすることが出来ます。人々は欲望に打ち勝ち、何も所有しなくても、全ての人が満足できる最高レベルの生活を、協力して生み出す方法を生み出すことを考えなければなりません。

 

 世界はある国が覇権争いで勝利し、世界統一を果たしたのではありません。「所有をして独占することなく、みんなで分け合う」ノアの思想が広まることで、争うことなく、平和な一つの国になっていったのです。多くの国でエデンが作られ、世界中の人々が自由に住めるように「アスクレピオス」やその周辺に高級ホテルを次々と建設しました。国を超えてエデンは次々と建設され、少しずつ世界中の難民を受け入れ、住居や食事を無料で提供していきました。代わりに、エデンの建設や運営に参加し、もっと多くの人達を救うために協力してもらうことにしたのです。貧困で苦しむ世界中の人々にとって、エデンが世界中に多く作られることこそが唯一の希望となりました。エデンを壊すことは世界中の新世界を望む人々の希望を壊すのと同じことでした。世界中の政府にとって新世界ノアの思想が不都合な存在でしたが、エデンに手を出すことはどの国もできなかったのです。新世界と言う理想郷を創ることを願う人達は、世界中に広がり、国境を越えてエデンが作られました。そして、新世界を望む人達が政権を次々と獲得し、国境を廃止し、世界中の人達が自由に移動出来るようになっていったのです。

 

 世界を平和にし、世界中の人々が幸せに生きていけるようしたければ、世界中の人達が自由に利用できるエデンを作っていくことです。エデンは誰のものでもなく、世界中の人々のもの。だからこそ、何者も壊すことが出来ないのです。世界中にエデンが出来た時、戦争は無くなり、全ての人達が最高の生活を手に入れ、幸せに生きていけるようになります。それが新世界ノアの世界です。

 

過去の世界では土地を売買していました。誰のものでもなく、世界中全ての人々のものであるはずの土地を奪い合っていたのです。支配する側の人間だけではなく、多くの国民が安定した生活を求め、土地を手に入れて家を買っていました。戦争の原因になるのがこの土地の所有権です。こういった人々の暮らしが行われているのであれば、見直さなければなりません。戦争を起こす人々と同じ考え方をしている人間が国民の大半では、非常に危険です。

 

旧日本では竹島問題で「日本」は「韓国」とどちらの領土なのか言い争い、北方領土では「ロシア」と争っていました。この領土の奪い合いこそが戦争の火種です。この権力者たちによる領土問題のためにあなただけでなく、あなたの家族や大切な人たちを危険にすることは正しいことでしょうか?お互いの国で領土の主張をし合い国家間で深い溝ができるのは国民にとっても世界中の人々の平和にとっても良いことではありません。世界を平和にし、国民を安心して暮らせる政治ができないのであれば、政治を政府に任せるのは間違っています。

 

新世界ノアが竹島問題や北方領土問題、尖閣諸島問題をどのように解決した歴史とアメリカが世界統一を実現した歴史を過去から振り返り、学んでいきましょう。日本と韓国の両国が竹島の領土を主張し、韓国では反日デモが起きました。反日デモをニュースで流すことによって、日本は韓国人に悪い印象を持ち、韓国人は日本デモに参加し、より反日感情を強めることになったのです。政府主導の下、お互いがお互いを憎しみ合わせる教育が行われていました。これは平和と逆行する教育です。

 

もし、日本がこの竹島を放棄したとして、ほとんどの国民は大きな損失を受けるわけではありません。竹島は小さな島が2つと岩礁からなっています。住みにくい環境で元は無人島です。ほとんどの人は、何の影響も無いのです。

 

北方領土は当時ロシアが実効支配している択捉島(えとろふ)、国後島(くなしり)、色丹島(しこたん)、歯舞群島(はぼまい)の島々で、日本が返還を求めていました。ポツダム宣言後、日本の主張としてはロシア側が武力で制圧したとされています。

 

また、尖閣諸島は中国と領土問題で争っていました。尖閣諸島無人島で、日本側の主張としては、国連アジア極東経済委員会によって、東シナ海に石油埋蔵の可能性が発表されたことをきっかけに、中国が突如、領有権の主張を始めたとされています。この問題では中国海警局の船が日本領海に侵入し、何度も日本と衝突の危機を繰り返していたのです。

 

「新世界ノア」が政権を獲得すると、これらの領土問題を全て解決したのでした。

 

日本の主張が正しく、大国による理不尽な占領なのかもしれません。しかし、それよりももっと重要なことがあるのです。それは、国民の命です。国際問題によって戦争を引き起こす可能性があるのなら、全て放棄すべきだと考えたのです。

 

新世界ノアが政権を取った後、日本の政治は政党政治を廃止し、Webでの国民投票による直接民主制を行っていました。国際的な問題もまた、国民全員で投票を行い決めていたのです。新政権は国民に対して、国民の命を最優先し戦争の火種になる領土問題を解決するために問題になっている領土を全て受け渡すようにお願いをしたのです。いつか世界に国境が無くなり自由に住めるようになればまた、領土は戻ってきます。その時は日本の領土ではありませんが全ての人々のものです。だから、苦しい選択ですが今は平和のために最善を尽くしたいと伝えたのでした。政党政治は廃止されましたが、ノアが政権を握ったままでした。以前のように大きな権限はなく、あくまでも政治を決めるのは国民となっていました。大きな変革が起こった時代、正しい方向へ導くリーダーが必要でした。国民が行う政治が間違った方向に進まないように、新世界ノアの世界が実現するように有識者たちが集まり、専門家たちの考えを国民に発信する役割を担っていました。

 

ノアの教育により、日本が危険な場所であることは全ての国民が理解をしていました。当時、世界は万が一、第三次世界大戦が行われたことを想定して、軍事的計画が画策されていました。第三次世界大戦が行われた場合、最大の武器は「核兵器」と「ウイルス兵器」だと言われていたのです。日本や韓国、東南アジア群はアメリカ率いる自由主義国による中国核包囲網として計画がなされていました。日本各地には原子力発電所を設置し、いつでも核兵器を作れる用意が行われていたのです。1986年にソ連で起きたチェルノブイリ原発事故は広島や長崎に投下された原爆の100倍以上の威力を持つ放射性物質が放出されたと言われています。もし戦争になれば、原子力発電所が標的となり、日本は数日と持たず人間が住むことが出来ない土地になることを知っていました。また、2020年、コロナウイルスをきっかけに「ウイルス兵器の開発」が急速に始められました。世界には既に適切な治療をしなければ100%死に至るウイルスが存在していたのです。戦争では治療をしながら戦うことなど不可能です。いかにウイルス兵器にとって治療薬以上にワクチンが重要であるか世界の首脳陣は理解していました。「ワクチン」さえ開発できれば、ウイルスの培養も容易く、世界を支配する最強の武器の一つになるのです。そのため、コロナウイルスを理由に世界中の国々がワクチン開発競争を行い、人類にとって破滅的な未来へと進んでいたのです。

 

日本人は無駄な義務教育を撤廃し、真剣に日本の未来や世界の平和に向き合うためにテレビを通して政治を学んでいました。無料の全国放送であるテレビでは、エンターテイメントが全てなくなり、政治や法律など国の根幹に関わる情報だけが配信されていたのです。

 

万が一、この先、戦争になれば日本には未来がありません。北朝鮮や中国、ロシアと敵対し、戦争をするわけにはいかないのです。戦力などの問題ではありませんでした。核戦争をしなくても、原発を数十基も抱えている日本では、戦いようがないのです。相手軍が放つ全てのミサイルを打ち落とし、原発に被害を出さないことは不可能だったのです。国民投票によって戦争の可能性を少しでも減るよう竹島北方領土尖閣諸島の領有権を受け渡したのでした。さらに、その事をきっかけに韓国、中国、ロシアと友好条約を結んだのです。

 

新政権は次のように全世界に向けて領土の主張を辞める声明を繰り返しました。

 

「私たち日本国民には夢があります。全ての国境を無くし、世界中の国々を自由で平和なものにしたいのです。お互いに領土の主張をやめれば、お互いの国民が自由に行き来し、一つの国になります。そして、最終的には全世界の境界線が無くなり、絶対に戦争の起こらない平和な世界が訪れるのです。竹島北方領土尖閣諸島はその第一歩です。日韓、日露、日中はこれまでにない良好な関係を築き、世界平和への模範になり続けていきます。」

 

平和を妨げているのは「土地の権利」なのです。その権利が大きければ大きいほどより多くの「お金儲け」が出来るのです。権力者がお金儲けをするための権利のために世界中で争ってはいけません。

 

新世界ノアが政権を取った時、日本は全国各地でエデンの建築が進んでいました。大きな政府として1000兆円の国家予算を組み、その9割をエデンの建築や運営に充てていました。当初から12年で日本人全員の住居スペースを確保できる計画がされており、数は少ないですが既に完成されたエデンも存在していました。50階を超す巨大なアスクレピオスや周辺の高級ホテルに無料で住むことができ、食事も無料で提供していたのです。エデンの入園には日本人が優先されていましたが、エデン運営費の1割を使ってアメリカ、中国、ロシア、韓国の宿泊希望者たちを誘致し、もてなすサービスが行われ、良好な友好関係を作ることにも努力がなされていました。これは、国家間の友好関係だけでなくアメリカ、中国、ロシア、韓国の人々が日本に住むことによって、戦争のターゲットにさせない狙いや新世界を世界に広める狙いもありました。また、新世界ノアの実現を望む海外の人々を、積極的に受け入れエデンの建築の知識や技術を学んでもらいました。そして、エデン建築の仕事を行いながら日本人と同様に住居スペースと食事を提供しエデンに住んでもらったのです。このように海外からの移民を積極的に受け入れたため、日本の人口はたったの5年で1億2000万人から5億人を突破したのです。日本は人種や国家を超えて世界中の人々が集まる国となったのです。受け入ればかりではありません。日本人は海外へ渡り、世界中にノアの思想を広めながら、エデンの建築の知識や技術を伝えていきました。そのため、世界中にエデンが作られていったのです。世界は着実に一つになろうとしていたのです。

 

日本の新政権樹立後、国民の意志により、竹島北方領土尖閣諸島を失いましたが、それだけでは一時的な友好関係を結ぶだけで、さらに他の領土を主張され周辺国に占領されていく恐れがあったのです。そこで、ノアはアメリカが盟主として韓国と日本の三国が一つに統合しようと提案を持ち掛けたのです。日本がアメリカの一部になることで、絶対的な安全を手に入れることが最大の目的でした。さらに、万が一、戦争になった場合にアメリカへの避難が出来るよう準備が必要であると考えたのです。たとえ国の名前が変わっても国民の命が何よりも最優先しなければなりません。香港のように一国二制度を採用し、「通貨発行権の維持」と「ノアの政治体制」を残しながらアメリカと統合することを模索していきました。国との統合こそが世界統一への近道なのです。

 

その結果、日本はアメリカの一部になり、自治権を持ったアメリカの州の一つとなりました。パスポートやビザなしで自由に渡航が出来るようになったのです。一国二制度が採用され、引き続き新世界ノアが政権を担当しました。日本がアメリカとの統合後、大きく変わったことはアメリカの政治に日本が加われるようになったことと、日本の政治にアメリカ人が加われるようになった点です。日本は当時の政治体制を残す代わりにいくつか不平等な条件を飲みアメリカとの統合を実現させました。

 

1つ目は、投票が与える影響です。日本は世界中の移民を受け入れた結果、様々な人種や国々の人々が集う人口5億人を超える国となっていました。国民が自ら投票で政治を行う直接民主制が行われていました。アメリカの人口は約3億2000万人で全アメリカ人が国民投票で政治に参加できるようになったためアメリカが日本に与える影響はかなり大きくなったのです。アメリカ人が直接国民投票で日本の政治を左右できる影響力をもつようになったのです。さらに、日本がアメリカの政治に与える影響は、あくまでも州の一つとしての影響力にとどまりました。アメリカは日本との統合によって51の州になり、その一つの影響力までしか与えることが出来なかったのです。政治に与える影響力と言う面で、不平等な統合でしたが、これにはある狙いがあったのです。アメリカ人の多くが新世界の政治に興味を持ち、民主化運動が盛んに起こっていました。政党政治ではなく、国民投票で国民が直接、国が変えられる直接民主制を実際に経験することで、アメリカが真の民主主義国へと変わっていく決定的な影響を与えたのです。

 

2つ目は、アメリカへの納税です。その結果、日本国民は日本への税金とは他にアメリカへの納税も行わなければならなくなった点です。しかし、アメリカへの納税理由は日本を防衛してもらうことに限定されているため、他の州の10分の1の納税で済むことになっていました。それでも、アメリカにとっては5億人の日本人からの納税はかなりの税収になったのです。日本の新政府はアメリカへの納税による負担軽減のために、政府が7割を負担することとなりました。

日本人はアメリカと統合したことによって追加の増税が行われたのですが、政府が国民の最高レベルの生活を保障しているため、国民の生活は苦しくなりませんでした。むしろ、アメリカの一部となったことによって、より大きな後ろ盾を手に入れ、絶対的な安全と安心した生活を送れるようになったのです。そのための税金と思えば、国民たちはむしろ満足していました。また、アメリカにとっても日本が協力国ではなく自分たちの国の一部と思うことによって、日本を守ることへの意識が大きく高まったのは言うまでもありません。

日本がアメリカに統合されたことが与えた影響はそれだけではありませんでした。アメリカ人は日本人が日本とアメリカの二国への納税を行っても、国民の生活が苦しくならないばかりか、幸せと生きがいを感じて仕事を行い、余裕のある生活を送っていることに気が付き、アメリカもまた、日本を見習い税金で国民を助ける政治へと大きく舵を切ったのでした。

 

アメリカもまた大きな政府となり、50兆ドル(=約5000兆円)の国家予算を組み、そのうちの9割をエデンの建築・運営へと使うようになったのでした。この予算はわずか半年でアメリカの全国民が、エデンに住むことの出来る金額でした。最初の1年は建築に関する教育が必要だったために、エデンの建築は進みませんでしたが、国民が建築の知識と技術を手に入れた後は、驚異的なスピードで、エデンが作られていったのです。アメリカ人もまた、高級ホテルに無料で宿泊し、一流の料理人が作った料理を毎日食べることが出来るようになりました。

 

日本がアメリカに統合された後、様子を伺っていた韓国もまた日本同様の統合を果たしました。地政学的に日本同様、危険な位置にある韓国もまた、ノアの影響により韓国国民もまた戦争への危機を感じていたのです。アメリカの一部となることで、安全を手に入れ、日本とアメリカとともに足並みを揃え、理想世界の実現を望んだのでした。

 

日本と韓国がアメリカへの統合を果たすまでの期間、日本、アメリカもまた移民を積極的に受け入れ、アメリカは30億人を有する超巨大国家となったのです。アメリカは世界中の様々な文化、人種が暮らす国となっていました。人口だけが世界一ではなく、技術や情報、知識もまた世界一を誇り、世界最強の圧倒的軍事力も有していました。さらに、アメリカは「世界一幸せな国」として生まれ変わったのでした。また、中国やロシアへの外交は強硬路線から大きく変更し、最高級エデン「神々の楽園ヴァルハラ」へ誘致を行い、「もてなす」ことによる外交へ変わりました。また、中国、ロシア人もまたアメリカへの移住を希望する人々は絶えませんでした。アメリカには多くの中国人やロシア人が住む国となっていたのです。もはや、アメリカに対抗できる国は世界に存在しませんでした。反米教育や反米運動は無くなり、アメリカを非難することは、反対に自国の民からの批判を浴びることになっていたのです。

 

アメリカとの統合後、日本や韓国に対する軍事行動は一切行われなくなりました。日本と韓国はアメリカと言う名の下、完全に守られたのです。それを見ていた世界中の国々もまた、アメリカへの統合を願い出ました。最も早く動いたのは紛争や戦争を行っている治安の悪い国々でした。アメリカへの統合後、国民を安全なアメリカ本土へ移住させ、軍隊を派遣し、戦争をただちに止めるように促したのです。戦争はその日を境に終結し、平和をもたらしたのです。圧倒的な軍事力を誇り人口30億人を超えるアメリカへ攻撃できる国などもはや、存在しませんでした。さらに、支援としてイギリスやフランスなどの自由主義の国々が協力したためより強大な力を見せつけたのです。アフガニスタン、シリア、クルド、トルコ、リビア、イエメンなどの国々が次々とアメリカに統合していきました。戦争の原因は紛争や戦争をしている国に、アメリカ率いる自由主義国の西側陣営と中国・ロシア率いる東側陣営が支援を行っていたからでした。しかし、紛争や戦争を恐れ、中国やロシアと繋がっていた東側の国々までアメリカとの統合を願い出たのです。さらに、北朝鮮までもがいくつかの条件をつけてアメリカとの統合を申し込んできました。北朝鮮は中国の言いなりであったため、条件は「労働党の首脳陣の保護」と「中国から北朝鮮国民を守り解放する」ことの二つでした。こうして、世界から紛争や戦争は完全になくなったのでした。紛争や戦争の恐れが無くなった後、その土地にエデンの建築を次々に行いました。ノアの使徒アメリカ人が自由に無料で利用できるエデンが次々に増えていったのです。その建物に手を出すことは何者も出来ませんでした。エデンは世界中の人々の所有物であり絶対的な安全があるのです。

 

その流れは止まりませんでした。中国、ロシアとの国境付近にある国々はアメリカとの統合により、アメリカの一部となることで、国を守ろうとしたのです。新世界ノアの世界を目指す人々は世界中に溢れ、国の名前にこだわる人々はいなくなっていました。そんなことよりも、より人々の命を優先し、安全な道を選んだのです。

 

その結果、世界196カ国の内、100を超える半数以上がアメリカとの統合を果たしました。戦うことなく急速にアメリカが領土拡大していく中、中国とロシアの共産主義国は領土拡大が不可能となり、水面下で行われていた西側陣営と東側陣営との長い冷戦時代はここに幕を閉じたのでした。

 

アメリカとの統合を果たさない国々では、民主化運動が過熱していました。選挙による偽りの民主主義に異論を唱え、国民投票による直接民主制へ変えようとする新民主化運動が絶頂を迎えていたのです。デモは行われませんでした。過去の過ちから学んだのです。新世界を望む人々が次々と国会議員に立候補をし、当選を果たしていきました。民主主義を掲げる政治家たちで政界を占めたのです。その結果、直接民主制による新民主国家が次々と誕生し、国民の意志の下で、エデンを作り理想の新世界を創ろうとしたのです。大きな政府として、国家予算のほとんどをエデンの建築、運営に充てる政治を行ないました。ノアの思想により、国境を越えて世界中の人々が自由に利用できるようになったのです。

 

そのころ、最も民主化運動が過熱したのは中国、ロシアでした。共産主義民主化度の低い両国では、国民投票による直接民主制は他の国以上に魅力的な政治でした。さらに、アメリカの繁栄を目の当たりにした人々は国を変えようと行動を起こしましたが、政府への恐怖と圧力により新民主主義国への移行は困難を極めました。特に情報規制を強力に行い、政府に反対する者を粛正する中国では国を変えることが不可能のように思われていました。しかし、国民は水面下で団結を強め、移民を積極的に受け入れていたアメリカへ逃亡することになったのです。

 

中国、ロシアの周辺国はアメリカの一部となっていたため、海を越えることなくアメリカへ逃げることができたのです。アメリカへ逃亡しようとするその人数は、なんと両国合わせて5億人の群れを作り、それを止めるよう命令を下された軍人は、逃亡する自国民の背に銃を向けることが出来ず、逃亡者の協力をしたのです。ロシアはいち早く、民主主義を受け入れ、国家を立て直すことを宣言し、国家の崩壊を免れようとしました。また、ロシアの民主化宣言の数日後、中国もまた民主化宣言を行い国家の崩壊を食い止めたのでした。

 

2030年に全ての世界の国々は直接民主制による完全な民主主義へと変わったのです。国民投票による直接民主制によって、ロシアや中国もまた、理想世界を目指し大きな政府としてエデンの建築・運営に大きく乗り出しました。アメリカへ統合を果たさない国々でも、エデンの建築や運営が行われ、国境を越えて自由にエデンで暮らせるようになりました。事実上、国境は意味のないものになったのです。

 

それから、5年後の2035年には、世界各国の首脳陣が集まり国境を無くし一つの世界にしようとサミットが開かれました。国境を無くすことを全会一致で可決し、世界の名を「ノア」としました。世界の半数以上の国と統合を果たした最大の超巨大国であったアメリカは、各国から税金を徴収し、圧倒的な軍事力を保有していましたが、全世界の軍縮を条件にアメリカもまた段階的に軍縮を行っていく計画を発表しました。また、ノアは「核兵器」「ウイルス兵器」による戦争を無くすために、「核兵器の撤廃」と「原子力発電所の廃棄」、「ウイルス研究および治療薬・ワクチン開発の禁止」を決定しました。さらに、戦争で儲かる可能性のある仕組みを見直し、戦争によって何者も利益を得ることが出来ない国際法が成立。これによって、株や為替と言った金融取引は撤廃され、武器や兵器などを製造する軍事企業は今後、戦争や紛争時に得た利益をノアに返還し、平和に役立てる取り決めが行われました。ここに世界平和宣言が行われたのです。

そして、この日を「世界統一の日」と定め、新世界ノアの生誕祭が行われ、新世界の実現に貢献した人々が表彰されました。新世界ノアを実現し、世界を統一したこの戦いは「ラグナロク」と呼ばれ、権力者が支配していた「世界の終わり」と「理想の新世界の始まり」を表す言葉として伝えられています。血を流すことのない聖なる戦いによって人類が一つになった歴史として語り継がれているのです。現在、この「世界統一の日」は全世界が共通の祝日となり、平和を祝う最も大規模な祭典になっています。

 

これが「世界統一」の歴史です。この日、人類にとって本当の平和が生まれたのです。

 

もし、再び政治が人々を支配し、混沌の世界が生まれた時には「聖戦ラグナロク」の歴史を振り返りましょう。平和への導きとなるはずです。世界中の人々はまず土地を奪い合うことをやめ、家を手放しましょう。土地を「独占」する考えが戦争を引き起こす根源です。人々が共に協力して幸せな生活を作り出すことが出来れば、土地を独占しなくても良い事に気が付くはずです。まずは、世界中の人々が幸せに生きていけるエデンを一つ作りましょう。国境のない平和な世界はこの一歩から始まります。