9.「ノアの教典」 9章「『医療』~不老不死の世界~」

 新世界ノアでは、幹細胞治療を行うことで不老不死を実現しました。老化を防ぐだけではなく、人間の全盛期に戻す若返りまでも可能になりました。全てのエデンの中央には50階を超える巨大なとても美しいデザインの「アスクレピオス」という高層ビルがあります。「アスクレピオス」はギリシャ神話の医神で、死者さえも蘇らせたとされています。不老不死を可能にした幹細胞治療を担う最大の施設にその名が使われています。その中には幹細胞培養施設があり、エデンに住んでいる人たちの全ての幹細胞を培養しています。

 

 幹細胞治療は自分自身の幹細胞を培養して増やし、それを元の肉体に戻すことです。この幹細胞培治療は新世界が誕生してから最も進歩した医療技術です。今では、培養を行うために必要な培地は改善が重ねられ、細胞分裂の速度が飛躍的に高まり、さらには細胞分裂の際、誤った細胞のコピーをほぼ0に抑えることが出来るようになりました。高齢者の幹細胞を取得し培養する場合には、幹細胞がかなり劣化しており、誤った細胞分裂を起こす確率が高いのですが、それらの誤った細胞のコピーは全て取り除く技術も開発されています。さらに、この幹細胞培養は完全機械化が義務付けられており、人間の手を加えずに全て機械でオートメーション化され、完全無菌状態で培養が出来ます。ですので、細胞培養士は、自らが培養するのではなく、機械が作った幹細胞に異常がないか確認することが仕事であり、現在、医療で最も必要とされている職業です。

 

 新世界では、けがや病気をしない国作りが進んでおり、治療を必要とする人々はほとんどいません。幹細胞治療を行うため、高齢者は全盛期の身体を取り戻し、介護が必要なく病気やけがもしなくなりました。結果、現在では幹細胞治療が医療の99%を占めています。幹細胞治療は完全に有料です。そのため、多くの人達は老化を防止し、肉体を維持するために働く人たちも少なくありません。

 

新世界では、仕事をしなくても最高の生活が提供されています。そのため、遊ぶために働くという考えが中心ですが、この幹細胞治療も仕事をするための大きな動機になっています。

 

通常、肉体を老化させずに全盛期の状態を維持するためには、毎月の幹細胞治療が必要になっていきます。それもかなりの量を体内に注入しなければなりません。そのため、点滴では必要な量を注入するために10時間以上を要していました。しかし、現在は全身に痛みを感じないほどの針を刺し、全身から幹細胞を入れる装置が開発され、30分程度で治療を終えることが出来るようになっています。

 

 また、幹細胞治療は老化防止や若返りのためだけに行われるのではありません。幹細胞治療を定期的に行うことによって、肉体を若い状態に保ち、免疫力を高めることが出来るのです。そのため、風邪やウイルスで死ぬことはなくなり、無症状に抑えることができる疾病も少なくありません。また、病気になった場合にも、自然治癒力が高いためすぐに治ります。

 

さらに、幹細胞を培養しておけば、いざと言う時にあらゆる病気やけがを治すことが出来ます。手術や大けがをした場合でも、幹細胞治療と併用することで超再生が行われ、短期間で治癒することが可能です。幹細胞治療をした場合と、しない場合とでは完治するのに5~10倍の差が生まれます。また、元の状態よりも強固な状態で強化回復が行われより強い肉体になるのです。

 

さらに、幹細胞治療の応用技術として、体内の幹細胞を極めて多い状態にし、成長にかかせないホルモンを注入することで身長も伸ばすことも出来るようになっています。ただし、一度身長を伸ばすと反対に身長を低くすることは出来ないため、身長を高くし過ぎないよう細心の注意が必要とされています。一度の治療で希望に応じた身長に調整することは難しく、数回に分けて徐々に希望の身長に近づけていきます。

 

また、数は少ないですが、臓器を培養して作りストックしている人たちもいます。これは、幹細胞治療とは比べ物にならないくらいの費用がかかります。臓器が悪くなった際に入れ替える治療なのですが、臓器を交換しなければならなくなる状態というのは不幸な事故にでも遭わない限り起こりえません。そのため、一部の超富裕層のみが万が一に備えて行っています。

 

新世界では、このように「不老不死の世界」となっています。幹細胞治療を望まない人々や働きたくない人々を除くと全ての人達が20歳前後の全盛期の肉体を保ち、介護も必要がなく働き盛りの身体なのです。介護を行っていた人たちや介護を必要としていた人たちは今やエデンの建築を手伝うため、仕事の分担により人々は週に2~3日程度、1日に5時間ほどしか働きません。それでも、新世界ノアの世界は全ての人達に最高の生活を提供できるようになったのです。

 

しかし、この「不老不死の世界」は良い事ばかりではありません。人間が死なないということは、人間の数が多くなりすぎて、人類滅亡へと歩んでしまう可能性を秘めていました。そのため、大きな法改正が必要となったのです。

 

新世界では、エデンにある高級ホテルに無料で宿泊できるだけでなく、プロの料理人が作った食事を一定金額まで無料で食べることが出来ます。さらに65歳以上になると、毎月10万ベリーの支給が行われるため、仕事をせずに遊んで暮らせるのです。ですので、一般的な高齢者は仕事をしないのが普通でした。しかし、20歳前後の肉体を手に入れ、働けるにもかかわらず働かない高齢者で溢れていたのです。高齢者たちが仕事をしなくても、人々は仕事時間が短く生活の負担が少ないため幸せな生活を送っていました。しかし、死なないというのは大きな問題を抱えていたのです。このままでは、働かずに遊んで暮らす人たちが毎日毎日、増えていってしまいます。このことは人々にとって脅威だったのです。

 

旧時代のように、悪質な政治によってけがや病気、自殺や殺人で死者を増やしたり、戦争をすることで人間の数を減らすわけにはいきません。皮肉なことに、そのような事で人間の爆発的な増加は抑えられていたのです。あくまでも平和的に理想的な、人類の数を安定させる仕組みが求められました。

 

理想世界の実現によって、人間が死ななくなり、世界の人口の増加は爆発的なものになっていました。多くの学者が警鐘を鳴らしていましたが、新世界ノアが2035年に誕生して世界の人口は140億人を超えようとしていました。2020年からわずか15年あまりで旧時代の人口が倍近く膨れ上がり、これは「地球環境」にとって深刻な問題だったのです。スウェーデンのグレータ氏が議長を務める地球サミットでは持続可能な人口についての発表が行われました。「このまま人口増加が進めば5年後の2040年には世界の人口は1000億を超え、人類の滅亡が避けられなくなる。1000億人を超えるようなことになれば、人口増加に歯止めがかからず、地球の食糧や資源は必ず枯渇してしまう。さらなる人間の手で自然を増やし、温暖化防止対策を行い完璧になったとしても、人類増加によって食糧の不足や温暖化は決して止めることが出来ない。最悪の場合、人類滅亡が避けられなくなったことが確実となった場合、人口増加が原因で、資源の奪い合いや人口減少を目的に、第二次世界大戦の100倍以上の規模の戦争が引き起こされる可能性がある。もし、ひとたび戦争が起これば核戦争を防ぐあらゆる取り組みが行われた新世界においても、核が戦争に利用されることは避けられないだろう。何も対策をしなければ人類に残された時間はあと5年だ」と全世界で報道されたのです。戦後の1950年に25億3200万人だった世界の人口は2020年には75億9469万人となり、2035年には140億人を超えてしまいました。

「命の大切さ」などを伝えるような教育はこの世の中から無くなっていました。どうすれば、持続可能なレベルまで人間を減らすことが出来るのか、それは難しい問題となりました。倫理的にも簡単には答えが見つからなかったのです。

 

爆発的な人口増加は一刻を争うこととなり、世界首脳会議サミットが開かれました。そこで、「世界人口抑制法」という国際法が定められ、世界中の全ての国々で「安楽死」が認められました。そして、幹細胞治療を1度でも受けた人たちは、旧時代の世界の平均寿命である72歳で「安楽死をしなければならないようになりました。

しかし、これには複雑な条件が採用されました。条件の一つは、「保有税の金額」です。保有税を一定金額支払えば、安楽死は免れ、歳を重ねるごとに納めなければならない保有税の金額が上がっていきます。100歳以上でも安楽死を免れることが出来るのは、ごく一部の富裕層だけになっています。これによって、毎月10万円の支給を受けているのにも関わらず働く高齢者たちが増え、仕事を分担することで世界中の人々はより、仕事から解放され、全ての人達が楽に暮らせるようになったのです。また、保有税による免除は「富裕層優遇政策」の一つでもあります。

安楽死を免れる二つ目の条件は、「子供を産まない」ことです。不老不死の世界では、生涯で夫婦が1人子供を産むだけで、人口が1.5倍になり、2人産めば2倍になってしまうのです。「出産」を抑えなければ、人口爆発を止めることは出来ません。そこで、出産した人数が増えるほど、年間に払わなければならない保有税が増える仕組みが採用されています。子どもを生涯産まなければ、幹細胞治療を受けても「安楽死」は完全に免除されます。また、人口爆発を防ぐために生涯で4人以上の出産は国際法で禁止されています。

安楽死を免れる三つ目の条件は「世界への貢献」です。これは世界で最も人類に貢献したトップ100人には幹細胞治療を行っても安楽死が免除されます。これは毎年行われ、世界中の人々の投票によって、決められます。一度でも受賞すれば、世界中の人々を裏切る行為をしない限り、権利を剥奪されることはありません。この権利の剥奪もまた、世界中の人々の投票で決められます。

安楽死を免れる四つ目の条件は、「幹細胞治療を受けない」ことです。幹細胞治療を受けず、自然な老化を受け入れ、通常の人間らしい死を選ぶことも出来ます。ただし、これにはもう一つ条件があり安楽死を完全に免れるためには出産が1人までと決められています。

 

理想世界では、けがや病気はほとんどありません。老化もせず20歳前後の肉体を永遠に保つことができる不老不死の世界なのです。支えなければならない高齢者も少なく、仕事は世界中の人々で分担でき、人類は仕事から解放され自由な人生を歩むことが出来ます。ただし、その代償も払わなければなりません。

不老不死の世界でも「人は死ななければならない」のです。「世界に貢献すれば、より長く生きることが出来る」それ以上の条件はありません。これは、「不老不死」という禁断の果実をかじった人類が受け入れなければならない問題なのです。

 

次は「幹細胞治療」がなぜ人間を不老不死にするのかと言う話をしましょう。

 地球上にはプラナリアという生物が存在します。プラナリア無限に増殖することが出来、寿命という概念が存在しないのです。良い環境さえあれば、プラナリアは無限に増殖し続けることが出来ます。その再生能力は驚異的で、100個以上に分断されても全ての欠片から新しい個体への再生できるのです。

 

プラナリアのこの驚異的な再生能力の理由は「幹細胞」が全身至る所に多数存在するからなのです。幹細胞は無限に増殖し再生することが出来ます。このことから、幹細胞は時間の経過によって、劣化しないのです。つまりは、老化現象が起こらないということです。

 

過去の時代では、進化の未熟なプラナリアの幹細胞が特別で、人間の幹細胞が低い再生能力しかもっていないと考えられていましたが、そうではなかったのです。人間は受精卵という幹細胞を作り出し、その受精卵は新たな個体を生み出すほどの分裂能力を持っています。幹細胞は進化を遂げながら永遠に生き続けているのです。もし、幹細胞が老化するのであれば分裂を繰り返すごとに劣化していき先祖から子ども孫へ幹細胞が受け継がれていく過程で肉体は代々、老化を辿っていくはずです。最終的には赤ちゃんの時点で分裂能力の低い老人や死体が生まれても良いはずです。どれだけ分裂していっても、劣化することなくむしろ進化した形で全く新しい幹細胞は生まれ続けていきます。

 

 これは「人間の幹細胞もまた不老不死だという証拠」なのです。

 

 しかし、幹細胞は無限の再生能力・増殖能力を持ち不老不死にもかかわらず、人間は老化現象が起こってしまいます。何かが原因で幹細胞の劣化がおき、細胞数が減少して老化していたのです。

 

 幹細胞は最も古くから存在する生物の原点です。単細胞生物のように、自己増殖能を使って分裂して増えていきます。分裂する能力に特化しているため、特定の損傷には強く、分断されても再生が行われ、良い環境さえあれば劣化することもなく老化も起こりません。ところが、環境の変化に弱く未熟な細胞で、温度変化や栄養状態ですぐに死んでしまいます。

 

 幹細胞は自己増殖を行うだけでしたが、外からの衝撃耐えられるように一部の幹細胞は皮膚のように強くなったのです。このように、環境に順応するように細胞が変化したものを分化細胞と呼びます。生物は進化の過程で、幹細胞はより厳しい環境に耐えられる強い個体になるために、分化した細胞に変化していったのです。

皮膚や筋肉、目、鼻、口、心臓、肺、小腸、大腸、これらは環境を生き抜くために機能に特化した分化した細胞です。進化を繰り返せば繰り返すほど、様々な分化細胞を生み出し、より強い個体になったのですが、その代償として老化現象が起こるようになったのです。

 

 分化細胞には分裂する能力がありません。環境を生き抜くために生まれた分化細胞は時間とともに劣化し、死んで新しい細胞と入れ替わります。分化細胞を維持するのには幹細胞の自己増殖能によって細胞が増え、その細胞が分化しなければならないのです。老化現象が起こる原因は幹細胞の自己増殖能によって分化した細胞を維持する能力の限界を超えているためです。

 

 幹細胞と分化細胞の割合は、次のように変化していきます。(モデルは170センチ、70キロ)

 

 0歳では幹細胞数37億個:分化細胞数1.8兆個(1:490)

 20歳では幹細胞数3.7億個:分化細胞数37兆個(1:10万)

 50歳では幹細胞数0.9億個:分化細胞数28兆個(1:31万)

 80歳では幹細胞数0.18億個:分化細胞数20兆個(1:111万)

 

分化細胞が最大数になった20歳をピークに幹細胞への負担が大きくなり、幹細胞が元の理想的な肉体の状態に戻せなくなります。つまり、これが老化現象です。老化現象が起こるのは幹細胞数と分化細胞数の減少だけではありません。幹細胞自身に無理が生じ、徐々に劣化していきます。そのため、その幹細胞が自己増殖し、変化した分化細胞もまた劣化した状態で生まれてきます。時間とともにこの劣化が激しくなり、この劣化が様々な病気を引き起こし、死を迎えるのです。

 

幹細胞の負担率を見ると、赤ちゃんは1つの幹細胞が490個の分化細胞を負担すれば良かったのに対して、20歳では1つの幹細胞が10万個の分化細胞を負担しなければなりません。50歳では1つの幹細胞が31万個の分化細胞を負担しなければならず、80歳では何と1つの幹細胞が111万もの分化細胞を負担しなければならなくなるのです。20歳の時点でも、赤ちゃんと比べると約200倍の負担を強いられますし、80歳にもなると赤ちゃんの約2300倍もの負担を強いなければならないのです。幹細胞の分裂速度の限界を遥かに超えてしまい、徐々に劣化していきもとに戻せなくなるため老化現象が一気に加速するのです。

 

幹細胞研究の歴史を振り返ると2012年に京都大学iPS細胞研究所長の山中伸弥教授がノーベル医学・生理学賞を受賞したことがきっかけに、幹細胞研究は飛躍的に進歩しました。

 

 老化現象が幹細胞の減少によるものなら、幹細胞を入れれば良いという単純な発想で幹細胞補充療法を行いましたが、良い結果が表れた人たちもいましたが、一部の人達は幹細胞が癌化したのです。この研究は常に癌化との戦いでした。

 

 最初は、他人の幹細胞を利用していたため癌化したのです。つまりは、癌化とは体内で別の生き物が育っていると考えれば分かりやすいでしょう。さらに、良い結果が表れた被験者を調べると、注入した幹細胞は全て死滅していたのでした。これは拒絶反応によるものと判明し、他人の幹細胞を治療に使うことは出来ないという結論に至りました。

 

 さらに、注入した幹細胞が全て死滅しているのにもかかわらず、良い結果が表れたグループを調べてみると、幹細胞培養上清が原因であることが判明したのです。幹細胞に最適な環境を与え、高速培養する培地による影響と培養時に生まれたサイトカインやホルモンなどのたんぱく質が再生の命令を行い、自然治癒力を高めたのです。

 

 しかし、この幹細胞培養上清だけでは、治療効果に限界がありました。体内にある幹細胞数を劇的に増やすことが出来なかったからです。体内にどんなに培養上清をいれて幹細胞の最適な環境を作り分裂速度を上げても、自己増殖した幹細胞は周辺細胞からのシグナルにより、ほぼ全てが分化細胞へと変化するのです。

 

 ところが、体内から幹細胞を取り出し、幹細胞を培養すると周辺細胞からのシグナルが無く、自己増殖能だけが発揮され、幹細胞だけを無限に増やすことが出来るのです。

 

 この大量に培養した幹細胞を体内に入れると、周辺細胞のシグナルの影響を受け、注入した幹細胞のほとんどは分化細胞となり、本の一部しか幹細胞として自己増殖能を発揮しません。つまり、減った幹細胞を補う量では、分化してしまい全く足りないのです。ただし、意味がないわけではありません。体内に注入した幹細胞が分化することによって、それらが新しい細胞への生まれ変わり、幹細胞の負担を大きく軽減することが出来ます。また、自己治癒力も飛躍的に高まり、質の良い細胞へ変化するのです。

 

 しかし、肉体を20歳に戻すためには、幹細胞数と分化細胞数が20歳と同等以上にする必要があります。例えば50歳から20歳に戻すための幹細胞の注入が必要になるか考えてみましょう。先ほどの、比較の一部です。

 

20歳では幹細胞数3.7億個:分化細胞数37兆個(1:10万)

 50歳では幹細胞数0.9億個:分化細胞数28兆個(1:31万)

 

 20歳と50歳を比較すると、幹細胞数は2.8億個の差があります。ですので、2.8億の幹細胞を入れれば20に戻れるのかと言うとそうではありません。体内に入れると幹細胞と分化細胞の比からも分かる通り、50歳では最適な分化細胞数が足りていないため、幹細胞はほとんどが分化細胞へ変化します。幹細胞のまま変化しないのは2.8億の幹細胞中、たった約900個しか幹細胞として残らないのです。

 ですので、幹細胞を補うという発想ではなく、分化細胞を20歳の状態に戻すという考えが一般的です。皮膚は幹細胞ではなく分化細胞です。つまりは、分化細胞数こそが肉体の若返りを左右しているのです。そのため、50歳から20歳の状態に若返らせるために必要な幹細胞数は2.8億個どころか、9兆個が必要なのです。9兆個という幹細胞の数は70キロの体重の人であれば、17.5キロにも相当します。これほどの、量を体内に注入することは不可能だとされていました。通常、輸血で1パック200mlですので、87.5パックの量が必要になります。幹細胞治療の場合は安全を考慮して1回の治療で最大5パック1Lまでとされています。最大量での治療の場合、月1度の幹細胞治療を行うと約1年半年の期間で50歳から20歳に若返ることが出来ます。

20歳から50歳の場合、1年で3000億個の細胞が減っていくため、老化を防ぐためには最低でも1カ月に250億個の幹細胞治療が必要になります。これは70キロの体重の人であれば、約50mlに相当します。ですので、老化を抑えるためには1カ月約50mlの幹細胞治療を行えばよく、若返りは50以上が必要だとされています。それから、幹細胞治療1パック200mlあたり、4カ月分の若返りが目安とされています。

 

 幹細胞治療を行うと幹細胞が分化細胞として、すぐに新しい細胞へ生まれ変わるため見た目上は劇的な変化が見られます。しかし、幹細胞数を基準に考えた場合、完全に20歳の状態にするためには87.5パックの点滴が必要になるのです。以上が若返りに必要な幹細胞治療の説明です。

 

 幹細胞治療は、若返りだけではありません。過去の時代では治療困難とされていた病気や怪我も並行して治ります。心筋梗塞脳梗塞、腎不全、認知症、糖尿病、パーキンソン病、リウマチ、変形性関節炎、肝臓病、免疫疾患(膠原病など)さらに、老化現象で起こる薄毛などの悩みも治ります。

 

 次は費用面の負担について説明しましょう。以前行われた治験から幹細胞治療には必ず本人の幹細胞を利用することが義務化されています。そのために大量生産し、製品化することが難しいのです。言ってみれば、あなた専用の治療薬を作るようなものです。ですので、旧時代ではたった1度の幹細胞治療に100~300万円以上もの費用がかかっていたのです。現在では、超巨大幹細胞培養施設アスクレピオスの細胞バンクにエデン内の幹細胞を個別に培養し管理しています。国による大規模設備の提供と運営費補助を行う事によって今では1回1パック200mlの幹細胞治療で5万円程度の負担で済むようになっています。

 

 次に幹細胞の生命科学から「輪廻転生(りんねてんしょう)」の新たな考え方を教えます。

 人間は幹細胞の集合体に過ぎません。その幹細胞が分化して人間を構成しています。幹細胞は分裂を行い、進化を繰り返しながら永久に生き続けます。幹細胞には螺旋状の形をしたDNAを持っており、その中に情報を保存したまま、次の個体を作りだします。あなたが死んだあと、幹細胞は次の世代に受け継がれ、子孫としていずれ生まれ変わるのです。もし、子孫を残さなければ、最もDNA情報の誓い親族の末裔として生まれ変わります。これが幹細胞の生命科学から輪廻転生を簡単に理論的に説明したものです。

 しかしながら、どのような生命科学を用いたとしても、輪廻転生を証明することは不可能です。このように教育されているのは持続可能な世界を実現するためです。

 

 輪廻転生がないと考えれば、人々は来世の事まで考えません。旧時代では経済が優先され好き放題、資源を使いつくし、地球環境は急速に悪化していきました。「必ず子孫として生まれ変わる」と教育することで、来世はもっと良い世界に生まれたいと考えるようになり、より良い未来を残そうとするのです。理想世界の実現。つまり、戦争の無い世界。無駄に資源を使わない世界。理想の政治。また、自分自身の子供や孫を大切にすること。などなど・・・。輪廻転生の思想はあらゆる面でこの世界を良い方向へと導くのです。死んだ後は関係ないと考えてはいけません。あなたがやったことは後世に必ず影響するのです。そして、後世であなたは子孫として生まれ変わり、前世で行った報いを必ず受けます。全ては因果応報なのです。

 

新世界における国民が知っておくべき医療の説明はこれで終わりです。次に旧日本政府が行った医療の闇を簡単に学びましょう。

医者は政府が最も優遇する職業の1つでした。政府は医療を儲けさせるために、様々な悪に手を染めたのです。完璧な世界ではけが人や病人が生まれず医療が儲からないからです。「自動車社会」、「行き過ぎたスポーツ」、「過酷な労働」、「無責任な食事管理」これら全てが国民の犠牲のもとに医療を支えていました。これらは全て、政治で変えることが出来ますが、あえて政府は変えようとしなかったのです。国民が怪我や病気をすることが前提で医療を成り立たせていたからです。

 

 自動車交通事故では警視庁の統計によると1948年から2019年までの72年間で、63万6481人が死亡し、4706万2429人の負傷者が出ています。広島の原子爆弾で約30万人、長崎では約12万人が死亡したとされているため、交通事故は広島の原爆の2倍、長崎の原爆の5倍の死者数を出したのです。これは、広島の原子爆弾が35年に1度、また、長崎の原子爆弾なら14年に1度落とされているようなものでした。死亡者数よりも重要なのは4706万2429人の負傷者です。平均にすると年間65万3644人の負傷者が生まれていたのです。この国民の犠牲が医療を支えていたのです。政府が自動車社会を作ったのは当然それだけではなく、民間からお金を搾取することも狙いでした。

 

 続いて、医療を支えたのは「行き過ぎたスポーツ」でした。スポーツ外傷は年間およそ15万件で、スポーツ障害を合わせると20万件以上発生していたと言われています。交通事故では72年間の平均で年間65万人の負傷者が生まれており、スポーツでのけがが20万件というのは、交通事故の3分の1程度ですが、かなり医療に貢献していたと考えられます。スポーツが盛んになるように学校とテレビでの洗脳教育が行われていたのです。オリンピックもその洗脳の一つでした。

 

交通事故とスポーツだけで年間85万人の負傷者が生まれていたのです。毎年、100万都市に近いくらいの人々が負傷をしていました。大きな怪我では完治するのに何年もかかり、生涯、完治しない怪我も発生していました。次第に治療が必要な患者は累積していき、とんでもない数に膨れ上がったのです。常日頃から病院の待合室は人で溢れかえっていました。何時間も待たなければならないにもかかわらず、診察時間が5分くらいというのが当たり前の状態でした。

 

2020年、新型コロナウイルスのような非常時に対応することが出来ず、感染の大流行を止められたにもかかわらず、医療崩壊寸前のような状態になってしまいました。検査すらもまともに受けることが出来ず、感染者を自宅に隔離という事態にまで発展したのです。

 

 これも全て、政府が医療を儲けさせようと、徹底した学歴差別によって医療を独占し、さらに「自動車社会」、「行き過ぎたスポーツ」、「過酷な労働」、「無責任な食事管理」などによって、けが人や病人を増やし続けた結果だったのです。

 

 政治と医療との癒着がこのような医療を国民に与えてしまうのです。

 新世界ノアとなった現在、幹細胞治療が99%を占めています。その道のりは決して楽なものではなく、非常に険しいものでした。

 

 過去の時代の医療は歪んでいました。政府がけが人や病人を作る政治を行い、それによって治療する医者が儲かる仕組みだったのです。これらの既得権益が、新しい幹細胞治療の可能性を世の中に示さなかったのです。医療は大きく変わりました。治療を行っていた医者の仕事はほとんどが無くなり、看護師や介護士も同様に仕事が無くなったのです。また、それだけではなく、幹細胞による自然治癒力で治るため、薬もこの世の中からほとんどのものが姿を消しました。過去の医療で既得権益を得ていた人々のビジネスは大きく失速したのです。過去の政治は医療との癒着が強く、幹細胞治療を認めなかったのです。

 

 それを大きく変えたのが2020年に大流行したコロナウイルスでした。新世界ノアの思想が世界に広まり、ワクチン開発が戦争の引き金になる危険性が指摘されるようになったからです。コロナウイルスは免疫力の高い若い世代の多くが無症状だったため、免疫力の強化で感染症を乗り越えようとしたのです。その時、既にコロナウイルスに対する幹細胞治療の良いデータが世界中で次々と報告されていました。ワクチン開発ではウイルスの研究が必要になりますが、幹細胞の培養は自分自身の細胞を培養するだけですので、ウイルス兵器が開発される恐れがなかったのです。また、若返りだけでなく、難治性の病を抱えていた人たちからの強い要望もあり、需要が一気に高まったのです。

 

 2021年に、新世界ノアの世界を実現しようとする政治家が次々に生まれ、政府は幹細胞治療を認めざるをえなくなります。その後、新世界ノアが政権獲得後、エデン開発を幹細胞治療が医療の主軸になることを前提にアスクレピオスが建設され、その中心に幹細胞培養施設が作られました。これによって、国民全員の幹細胞が培養できる環境が整い、幹細胞治療が当たり前の世の中になっていったのです。

 

 医療は決して政治と繋がりを持ってはいけません。現在では、国民投票によって政治が直接行われています。医療が誰か一部の人間に独占されてしまうことで、お金儲けのためにけが人や病人を増やそうとする人間が現れてしまいます。